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この絵本の表紙は鮮烈です。こちらを振り返る犬の淋しそうな表情といったら、一目見たら目が離せないくらいです。
この絵本は文章のない文字通りの絵本です。しかし、その絵は表紙と同じようにとても雄弁で、まるで文章を読んでいるように語りかけてきます。。そして、モノクロのデッサン画で描かれたそれは少しかなしい物語です。犬が車から捨てられてしまいます。走り去る車、それを追う犬。犬はずっと車を追います。でも車は見えなくなってしまいます。野をさまよい、街にたどりつき、ひとりぼっちの子どもと出会うのでした。この出会いに読者は救われた気持ちになります。しかし一度味わったかなしさは、なかなか消えることがありません。それは犬自身のかなしさだからでしょう。主人に捨てられたかなしみは、やさしい子どもと出会うことができても、それですべて拭い去られるものではないからです。この絵本は、一見大人向け、あるいは年齢の高いお子さん向けのように思えます。しかし、このような「かなしさの疑似体験」は、年齢の低いお子さんにとっても必要なことではないかと思われます。この絵本もまた、幅広い年齢の方々におすすめします。(小田切聖之介)作・絵: ガブリエル・バンサン出版社: BL出版税込価格: \1,365(本体価格:\1,300)発行日: 1986年ISBN: 9784892389573