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発見する喜びと言うものがあります。何も世紀の大発見でなくとも、日常の些細な事、普段気づかなかった事に気がついたときに心のうちに湧き上がる喜びには替えがたいものがあります。 この絵本の作者、安野光雄氏は「1,000の物語のある本」を作りたいとの願いを持ってこの絵本を描かれたそうです。旅の風景を描いた、字のない絵本です。旅人が船で岸にたどり着くところからはじまります。馬を買い、丘を越えて村から町へと向かいます。ブドウの収穫、引越し、学校、競走、水浴びなどなど・・・。よく見ると、みんながよく知っているお話の世界も登場しています。さらに世界中の名画や彫刻、どこかで見たことのある有名人達もさりげなくたたずんでいます。以前に「ウォーリーを探せ」という本が人気になったことがあります。人ごみの中からウォーリーを探すという単純なゲームの本ですが、大層流行りました。しかし「ウォーリーを探せ」はウォーリーを見つけたらお終いです。巻末にはウォーリー以外にも探して欲しい人物のリストが載っていたりと工夫はありましたが、おまけみたいなものです。この絵本は別に何かを探してくれなどとは言っていません。自分で発見するのです。 見るたびに新しい発見があります。「あれ?この人は2ページ前にもいなかったかな」ページを行きつ戻りつしつつ確かめることもしばしばです。長いときは数ページに渡る物語の場合もあります。「やぁ、ここに、あのお話の登場人物がいる」「この窓のご婦人はあの名画にそっくりだ」そのうちに自分の知識を試されているような気分になることもあります。「この人物は私は知らないが、実は有名な小説の登場人物ではないのか・・・?」「この二人はあの有名な物語の二人みたいだ・・・そういえばちゃんと読んだことがなかったけれども読んでみようか・・・。」「この広場の彫刻、美術の教科書で見た覚えがあるけれど作者は誰だったっけ?」1,000の物語は無理でもせめて100くらいは見つけたくなります。 今までに、「旅の絵本(中部ヨーロッパ編)」、「旅の絵本Ⅱ(イタリア編)」、「旅の絵本Ⅲ(イギリス編)」、「旅の絵本Ⅳ(アメリカ編)」、「旅の絵本Ⅴ(スペイン編)」、「旅の絵本Ⅵ(デンマーク編)」の6冊がでていましたが、最近になって「旅の絵本Ⅶ(中国編)」が出版されました。知識を試されると言っても大人向けと言うわけではありません。発見する楽しみは子どもでも同じ、本好きなお子さんなら知っている話をみつけたときの喜びはひとしおで、さらに読書が好きになるでしょう。小さなお子さんと物語を考えながら読むのも良いでしょう。秋の夜長にはもってこいの一冊です。(小田切聖之介)作・絵: 安野 光雅出版社: 福音館書店 税込価格: ¥1,470(本体価格:¥1,400)発行日: 1977年4月15日ISBN: 9784834005394※「旅の絵本Ⅱ」は¥1,470、「旅の絵本Ⅲ」~「旅の絵本Ⅶ」は各¥1,365で同じく福音館書店から出版されています。