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福島の事故以降、お蔵入りで公開すらされていない作品や、劇場公開作品ながらソフト化されていなかった作品などが続々とDVD化されている。そうした中でも注目の一本がこれだ。 原作:田原総一朗(筑摩書房・刊)監督:黒木和雄出演: 原田芳雄、山口小夜子、風吹ジュン、佐藤慶時間: 106 分制作:1978年東北のある港町の海岸に男女の心中死体が発見される。そんな中、田舎に法事のために帰ったまま戻らない女を連れ戻しに青年やくざが東京からやってきた。そして女の行方を捜し求めるうちに海岸の心中死体は自分の女だったことが判明、死ぬはずのない女の死因を追求する青年やくざだったが、その前には大きなどす黒い罠が仕組まれていた…。当時は反原発だった田原総一朗の衝撃のドキュメンタリー・ノベル「原子力戦争」を、黒木和雄監督が映画化した重厚な社会派サスペンス。主演は今年7月に他界した反逆の名優原田芳雄。原田芳雄とのコンビ作を多く発表した黒木監督ならではの演出で彼の骨太な個性を爆発させています。また世界的に活躍したファッションモデル、故山口小夜子の映画初主演作でもあります。撮影時点から、さまざまなところからマークされ、撮影もうまくいかなかったと聞いています。だからでしょうか、原発内部に入るわけでもなく、原発の危険度的な話は描けていません。黒木監督としては歯切れの悪い感じです。もちろん、原作とは別のフィクションなのですが、サスペンスとして見ても事件の発端である事故が会話と資料だけで描かれているなど、緊迫感に欠けるところが何箇所もあります。故佐藤慶演ずる新聞記者なども登場し、ドロドロとした人間関係は見えてきますがもう一歩物足りません。しかし、時代を反映した作品と言う意味ではリアリティがあります。特にお茶を濁してすっきりとしない結末などは、まさに当時の原発問題を象徴しているのかも知れません。30年以上前に制作された作品にもかかわらず、偏ったリスク論、偏ったエネルギーセキュリティ論、安全神話、御用学者など現在の私たちの眼で見ると、かえってよく理解できる点が多いことは皮肉と言えましょう。この作品には一箇所だけドキュメンタリー的なシーンが登場します。原田芳雄が原発の正門でうろうろするシーンがそうです。原田芳雄は俳優・原田芳雄としてゲートから入ろうとし、カメラは警備員に阻止されるのです。「撮影しないでください」「勝手に入らないでください」「何か御用ですか、ないなら出ていってください」という生の声がかぶさる完全なるゲリラ撮影です。それを(おそらく)無断で挿入しています。監督の意地とも取れるこのシーンは、なかなかのみどころです。原田芳雄さんへの追悼にも、ぜひ一度ご覧になってください。(小田切 聖之介)